布の音、針の記憶|鹿港・刺繍工房で出会った台湾手仕事の美学

自然とアウトドアアクティビティ

「最近、観光じゃなくて、手を動かす旅がしたいのよ」そんなマリエさんの一言が、この旅のきっかけでした。台湾・彰化県の港町、鹿港(ルーガン)ーかつて商都として栄えたこの町は、今も刺繍や木彫りなど伝統工芸の息づく町として知られています。今回は、日常を離れ、静かな路地にたたずむ刺繍工房を訪れることにしました。

鹿港天后宮から歩いて5分ほど歩いて行きました。すると観光のにぎわいから一歩外れた小さな路地に入っていき、そこには手描きの針マークがついた木製の看板がありました。まるで隠れ家のような雰囲気に、マリエさんは小さな声でつぶやきました。

「ここ……ちょっと入りにくいかもね。でも、きっと素敵なものが待ってる気がする」こうやって私達の刺繍体験が始まっていきました。

無音の中で響く、針のリズムと暮らしの美

聞こえるのは、布に針を通す「すっ、すっ……」という静かな音だけです。まるで時間がゆっくりとほどけていくような空間でした。棚には、赤、金、翠、藍──絹糸が虹のグラデーションのように美しく並び、壁には鹿港の風景や伝統の花鳥文様をあしらった刺繍作品が、陽の光にやわらかく照らされています。

50代女性セミロング品が良い
工房主、林さん

「こんにちは、日本からですか?」

奥から現れたのは、小柄で優しい笑顔の女性。林さんというこの工房の主で、かつて日本の美大に留学していたこともあり、驚くほど自然な日本語で話しかけてくれました。ほんの数語交わしただけで、彼女の人柄にすっと心がほどけていくのを感じます。

50代女性セミロング品が良い
工房主、林さん

今日は刺繍、体験されますか? 簡単な模様からでも大丈夫ですよ」

私とマリエさんは顔を見合わせて、声をそろえて「お願いします」とうなずきました。林さんが出してくれた丸枠に張られた真っ白な布、そして柔らかな絹糸と、木製の道具箱がセットになって準備してくれました。どこか懐かしく、家庭科の授業の記憶がよみがえってくるようでした。

刺繍体験の流れ(所要時間:約1時間)

突然行ったにも関わらず1時間でこんなに体験できたことに、とても驚き感動しました。

模様選び(福・蓮花・吉祥雲など)
私たちは、林さんに案内されて模様のサンプルを見せてもらいました。「福」「蓮花」「吉祥雲」など、縁起の良い図案が並びます。

マリエさん
マリエさん

「私は蓮花にする、浄化の象徴でしょ?今の私にぴったりな気がする」

Luluco
Luluco

「私は吉祥雲にする、このふわっと広がる雲の形が、心の余白のように感じる。」

好きな色の絹糸を選ぶ
壁際の棚には、宝石のように輝く絹糸が並んでいます。

マリエさん
マリエさん

「私は紫と金にする、この色は気品があって大好き」

Luluco
Luluco

「私は青緑の糸にする、このなめらかな質感にうっとりする、一目惚れね」

林さんから日本語でのレクチャー
林さんは、糸の通し方から針の運びまで、とても丁寧に日本語で教えてくれました。

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工房主、林さん

「針の動きは、力を入れすぎず、布に添わせるように……」

マリエさんは「家庭科の授業以来かも」と苦笑いしていました。でも、林さんのやさしい口調に、私たちの手元にも自然と集中が生まれていったのです。

実践スタート
布を刺繍枠に張ると、ピンと張った感触が心地よく少し上手くなった気がしました。

マリエさん
マリエさん

「この感触、クセになりそう」

Luluco
Luluco

「この静けさって、ちょっと瞑想に似てる」

夢中になれる、贅沢な時間
布に刺した最初の一針が少し曲がってしまい、マリエさんから思わず言葉が飛び出しました。

マリエさん
マリエさん

「うわ、私の“福”の字、ちょっとへんてこかも」

Luluco
Luluco

「でも、その歪みも味だよ。旅の思い出になるし」

50代女性セミロング品が良い
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「下手でも、手で刺したものには“その人の時間”が映るんですよ」

やがて会話も減り、私たちはただ静かに、針と向き合っていました。工房の中は風の音も届かないほどの静けさ。針を動かす指先と、心がゆっくりと重なっていくのを感じました。

完成・持ち帰り
開始から1時間ほどで、私たちの刺繍が完成しました。不器用な縫い目で少し歪んでいるけれど、どこか温かい愛着の湧く作品になりました。林さんはそれをやさしく布袋に包みながら、「旅の記憶が、ちゃんとこの中に縫い込まれてますよ」と言ってくれました。

マリエさん
マリエさん

「これ、私、帰ってからも絶対飾る。市販のお土産よりずっと思い出になる」

会話の中で紡がれていく、家族と人生の記憶

休憩の合間に、林さんが高山茶を淹れてくれ、私たちも一緒にお茶を飲みながら会話が弾みました。その中で林さんが話してくれました。

50代女性セミロング品が良い
50代女性セミロング品が良い

「この工房は、母と娘と私の三世代でやってるんです。鹿港では昔、刺繍は嫁入り道具で、母娘で一緒に縫っていたそうです」

その言葉に、マリエさんが遠くを見つめるように頷きました。自分自身と重なったようです。

マリエさん
マリエさん

「私も昔、母と並んで編み物をしたなあ。今思えば、あの時間ってすごく特別だったのかもしれない」

高齢な女性
林さんの母

「この子、小さい頃から糸ばかりいじっててね」

その笑顔も、針の音と同じように、この工房に優しく染み込んでいました。その林さん親子の暖かい親子の歴史と時間が一針一針に刻まれているような、そういう長い時間を垣間見た気がしました。

旅のまとめ|記憶の質感を持ち帰るひととき

外に出ると、夕方の光が路地に差し込み、どこか懐かしい匂いがしました。刺繍工房の静けさが、まだ指先に残っています。「観光って、たまに“消費してる”感じになることもあるけど……今日は違ったね」マリエさんの言葉に、私も深くうなずきました。

目で見るだけでなく、耳で、手で、心で感じる旅──それが、鹿港の刺繍工房で過ごした時間でした。国は違っても親と子の時間、親から伝えられる技を紡いでいくことの大切さをしみじみ感じました。また帰ったら母とたまには、針で手作業をしたいと思った瞬間でした。

今回行った台湾・彰化県の港町、鹿港(ルーガン)のことをまとめてみました。行く時に参考にしてみてくださいね。

🌿 Lulucoの一言メモ(実用情報)

📍 場所:
台湾・彰化県 鹿港(ルーガン)
天后宮から徒歩5分ほどの路地裏に位置し、静けさと趣のある佇まいです。

🧵 体験内容:
台湾の伝統刺繍体験。
好きな模様と絹糸を選び、日本語でのやさしいレクチャーを受けながら刺していきます。

🕒 所要時間:
約60〜90分ほど。
「突然訪れた私たちにも、快く時間を作ってくれて感動しました」

💰 価格目安:
・体験:500〜700元
・完成品販売:300〜1,000元ほど

🌐 言語対応:
日本語OK。やわらかな日本語で教えてくれます。

📅 予約方法:
公式サイトまたは鹿港観光案内所経由での事前予約がおすすめ(空きがあれば当日も可)。

🎁 持ち帰れるもの:
完成した刺繍作品(希望すれば布袋に入れてもらえます)

📌 Lulucoのおすすめポイント:
「旅の中で、自分の呼吸に耳をすませた時間でした。観光地では味わえない、指先から伝わる“暮らしの美しさ”世界にひとつ、自分だけの“手仕事の記憶”を持ち帰ることができました」

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