親子3人で日月潭でヨットクルーズ体験「風と静けさに輝く時間」

自然とアウトドアアクティビティ

「お父さん、前にここに来てたよね。すごく静かで気持ちよかったって言ってた」

夕食後、ホテルのロビーで湖の写真を眺めていたとき、りゅうがぽつりとつぶやきました。その視線の先には、ガラス越しに映る静かな湖面がありました。花菜が「じゃあ、明日行こうよ」と嬉しそうに背伸びして、私も思わず頷きました。

こうして、予定にはなかったヨットクルーズの朝が生まれました。まだうっすらと眠気が残るなか、私たち親子3人は、静かな水社碼頭へと向かいました。

少人数制ヨットに乗って──朝の水社碼頭から出発

湖畔の空気は澄みきっていて、まるで風がやさしく背中を押してくれるようです。私たちが選んだのは、定員10名ほどのプライベート感あるファミリークルーズでした。観光のピークを外していたおかげで、湖全体がゆっくりと呼吸しているような静けさで、私たちのワクワク感をそっと押してくれているようでした。

花菜
花菜

「わー、これ、はじめて!」

Luluco
Luluco

「すごいね…空が全部映ってる…」

花菜がヨットのデッキに足を乗せた瞬間、船がふわっと揺れて「きゃっ」と笑い声が上がりました。りゅうは手すりを握りながら、「ちゃんと持ってなよ、危ない奴だな、、落ちるぞ」と兄らしい顔を見せました。湖面には空が映り込み、上下の境界が消えていく。まるで雲の上を漂っているようです。

出航とともにエンジン音が消え、風だけで船は進んで行きました。湖面には空が映りこみ、どこまでが水でどこからが空なのか、見分けがつかなくなる幻想的な光景です。私たちは自然に、声を潜めてその景色に溶け込んでいました。

湖上の静けさに身を始める

湖上の静けさに身をゆだねていると、ヨットはまるで風に導かれるように、滑るように湖を進みます。深く澄んだ湖面に太陽の光がきらきらと反射して、まるで光の帯の上を漂っているような不思議な感覚に包まれました。

りゅうちゃん
りゅうちゃん

「見て、あそこ。お父さんが言ってたの、たぶんこの感じだよ」

りゅうが指差した先に、七色の光の帯がゆらゆらと浮かんでいて、花菜は夢中でカメラを構えます。私はその後ろ姿を見ながら、なぜか言葉が出なくなっていました。呼吸さえも、そっと控えたくなるような静けさなのです。自然の静けさが、家族の心をやさしく包んでくれている──そんな温かさを感じるひとときでした。

つかの間のティータイムは、湖上で

クルーズがゆったりと中盤に差し掛かった頃、ガイドさんが「少し休みましょう」と笑顔で運んできてくれたのは、温かい台湾の高山茶と、地元産のドライマンゴーが出てきました。

木のトレイに湯気を立てるお茶を見た瞬間、花菜が「わあ、いい匂い…」と目を細め、りゅうは「このお茶、標高の高いとこで採れるんだよな」と興味津々で匂いをかいでました。

私もカップをそっと両手で包んでひと口…….湖の上で、風と静けさに包まれながら味わうお茶の香りは、まるで体の奥まで沁み込むようでした。言葉の数は少ないのに、心の距離はゆっくりと近づいていく──そんな不思議な時間が流れていました。

りゅうちゃん
りゅうちゃん

「なんかさ、ここで飲むと、いつものお茶よりおいしく感じる」

花菜
花菜

「湖に浮かびながらって、贅沢すぎるね」

言葉の数は少なくても、その空気感や風景を共有するだけで、その空気を共有するだけで、心が一つになっていくのを感じました。まさに、“何もしない”ことを楽しめる時間だったのです。

旅の1コマを残す──家族の絵という、もうひとつの宝物

ヨットを降り、水社碼頭のベンチで風に当たっていると、スケッチブックを広げていた地元の絵描きのおじさんが、にこにこと話しかけてきました。

高齢な男性
地元の絵描き

「あなたたち、いい顔してるね。よかったら描かせてもらえませんか?」

驚きながらも頷くと、おじさんは私たちを湖を背景に並ばせて、さらさらと色鉛筆を走らせはじめました。りゅうは照れくさそうに腕を組み、花菜は「ポーズしてもいい?」とふざけながらピース。私はふたりの間にそっと肩を寄せて、湖のきらめきを眺めていました。

風の音だけが聞こえる中、紙に浮かび上がっていく線と陰影──やがて完成した一枚には、写真とは違う、優しさが滲んでいました。

「この絵、日本帰ったら額に入れて飾ろう!きっと大切にする」と言った花菜の声に、私も静かにうなずきました。旅先での出会いや、誰かのまなざしが描く記憶、風景だけでなく、こうしたふれあいこそが、この旅を色づけてくれていたのだと、改めて感じた瞬間でした。

湖の潮音は、親子の思い出の音

陸に戻った私たちは、湖畔のベンチにしばらく腰を下ろしました。ヨットの揺れがまだ体に残っているような感覚。りゅうはじっと湖を見つめたまま、花菜は足元の小石を拾って並べていました。

りゅうちゃん
りゅうちゃん

「次は夕方に来たいな。湖、きっと黄金色になるよね」

花菜
花菜

「お父さんも一緒に来たら、もっと楽しいかも」

私たちの間には、言葉にしない気持ちがしっかりと流れていて、その静けさが何より心地よく感じられました。「旅って、景色よりも、こういう時間が残るんだね」誰かがぽつりとつぶやき、私たちはそっと微笑み合いました。

Luluco
Luluco

「なんだろうね…湖を見てるだけなのに、こんなに心が落ち着くって不思議だよね」

花菜
花菜

「たぶん、湖が“おつかれさま”って言ってくれてるんじゃない?」

この場所で過ごした時間は、ただの観光じゃなく、「観光じゃなくて、“家族で過ごした空気”が記憶になった気がする」として、そっと心に刻まれました。湖の静けさや風のやさしさまで、まるで私たちのために流れていたように感じます。ふとした瞬間に思い出すのは、景色よりも、そのときの3人の表情と、心が溶け合ったあの時間でした。

実用情報・予約ガイド

ヨットクルーズは、事前予約が安心です。私たちはKlook(クルック)という旅行予約サイトを使って、少人数制のファミリー向けプランを選びました。日本語にも対応していて、出発時間や乗船場所がはっきりわかるので、とてもスムーズでしたよ。

出航場所は主に「水社碼頭」と「伊達邵碼頭」の2つがあり、どちらもアクセスしやすく、ホテルから歩いて行けました。私たちは水社側に宿泊していたので、徒歩5分ほどで港に到着できました。
朝の湖畔を散歩しながら向かうのも気持ちよかったです。

料金は大人500元(約2,300円)、子どもは250元ほど。高山茶とおやつがついてこの価格は、かなり満足度高かったです。「観光地のクルーズってどうなんだろう」と迷っている方には、強くおすすめします。朝と夕方では湖の表情が変わるので、2回体験しても損はありませんよ。

宿に戻ってからの“もうひとつの贅沢”

ホテルに戻ったあと、りゅうが「帰ってきたばっかだけど、なんか、あのヨットクルーズもう一度行きたいな!」と言いました。花菜も「また明日も湖見たいなぁ」とぽつりと便乗しました。実は私も、あのクルーズの時間が終わってしまったことが少し寂しくて、ベッドに横になってからも湖の静けさが耳に残っていました。

「旅って、こういう一瞬を持ち帰るものかもしれないね」と私は声に出してつぶやきました。りゅうも花菜も頷きながら、クルーズの写真をスマホで見返していました。部屋の窓から見えた夜の湖は、昼よりもさらに深く静かで、まるで「またおいで」と語りかけているようでした。

 まとめ|湖に漂かんだ、ここにしかない時間

「気持ちよかったね。湖の風、すごく輝いてた」私のこの一言に、りゅうも花菜もそっと微笑みました。自然に身をゆだねる贅沢さを、3人それぞれが実感した証でした。日月潭のヨットクルーズは、ただの観光ではなく、親子の心をそっとほどいてくれる時間でした。

旅が終わってもふと蘇るのは、あの時の空気感と、交わした目線、そして同じ風を受けた記憶です。あのおじさんが描いてくれた色鉛筆画を見る度に思い出します。誰かと“今ここ”を共有する幸せ──それこそが、旅の何よりの贈り物だったのかもしれません。

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