台北観光をたっぷり楽しんだあと、「次はどこへ行こうか?」——その何気ないマリエさんのつぶやきが、この小さな冒険の始まりでした。
せっかくなら少し足をのばして、“日常を抜け出せる場所”を探してみよう!そう決めて私たちが向かったのは、九份・淡水・北投温泉の3スポットです。
どこも台北から1〜2時間で行ける人気の観光地で、自然、歴史、癒しが揃っています。日帰りや1泊で気軽に訪れられる上、バリアフリーにも配慮されており、高齢者や車いす利用者との旅にも安心なんです。
今回は、そんな旅の実際の体験談に加えて、アクセス方法やおすすめポイント、バリアフリー情報まで詳しくご紹介します。
夕暮れ時の九份は別世界
台北駅から電車で瑞芳駅へ(約45分)、そこからバスで向かうこと約30分。車窓から海が見え始め、九份が近づくと山の緑と町並みが交じり合う景色に変わります。バスを降りると、ほんのり甘い芋菓子の香りが漂い、胸が高鳴りました。
夕暮れ時に赤提灯が灯る坂道を歩くと、まるで映画のワンシーンの中に迷い込んだよう。高台のカフェで注文したタロイモ団子は、もっちりとした食感と優しい甘さが絶妙で、「こんな味、日本では出会えないね」とマリエさんと顔を見合わせました。
路地裏散策と小さな発見
有名な階段通りを外れて、少し脇道へ入ってみると観光客の姿が少なく、地元の人々が暮らす静かなエリアに出ます。小さな雑貨屋の店先では、手作りのランプシェードやレトロな看板が並び、どこを切り取っても絵になる光景です。
通りすがりのご婦人が「試食してみる?」と差し出してくれた芋ケーキは、素朴な甘さとしっとり感があり、ほっとする味わいでした。
さらに坂を登ると視界が開け、遠くの海と港町が見渡せる絶景スポットに到着しました。潮風とともに、九份特有の甘いお茶の香りがふわりと漂ってきます。そんな瞬間に、「またこの町に帰ってきたい」という気持ちが自然と湧きました。
バリアフリー情報
九份は坂が多く、バリアフリー対応とは言いづらいです。ただし、入口付近のカフェや展望スポットは比較的平坦なので、同行者がいれば楽しめます。実際、足が不自由なマリエさんも「一部でも来られてよかった」と感動していました。
- 坂道が多く車いすでの移動は一部困難
- バス停近くの展望スポットやカフェは比較的平坦
- 平日の午前訪問なら混雑が少なくゆったり観光可能
淡水(たんすい):夕陽と人のやさしさに出会える場所
淡水は台北からアクセスが良く、港町らしい景観と地元グルメ、そして人の温かさが魅力です。
歴史ある老街や、ロマンチックな恋人橋など、昼も夕方も違った表情を見せてくれます。
老街散策と心温まる出来事
MRTで台北駅から約40分ー駅を出ると潮の香りと焼き魚の匂いが広がり、旅の期待感が高まります。老街を歩いていると突然スコールが降り出しました。
慌てて屋台に駆け込むと、お店の方が笑顔で傘を貸してくれました。そんな親切は旅をより特別なものにしてくれます。
お店で食べた阿給(春雨入り油揚げ)は甘辛いタレが染み込み、熱々で食欲をそそります。黒糖タピオカのモチモチ感もたまりません。
恋人橋での夕景
夕方はフェリーで恋人橋へ。海と空のグラデーションが美しく、写真を撮っていると虹がかかりました。「雨が降ったおかげで虹に会えたんだね」とマリエさんが嬉しそうに呟きました。港町ならではの偶然の贈り物です。
漁人碼頭の夕景と散歩道
フェリーで向かった漁人碼頭は、港町のゆったりとした空気が漂う場所です。桟橋を歩くと潮風に乗って音楽が流れてきて、近くのカフェからはコーヒーの香りがしましてきました。
ベンチに腰掛け、ゆっくりと行き交う船を眺めながら、旅の締めくくりにふさわしい穏やかな時間を過ごせました。空が少しずつ茜色に染まり、波間がきらめく様子を見ていると、心の奥まで温かく満たされていくのを感じました。
バリアフリー情報
MRT駅から老街やフェリー乗り場までは段差が少なく、車いすでも安心して移動できます。十分駅にはエレベーターはありませんが、駅員のサポートや通路の工夫で介助があれば移動可能です。現地の人々の親切に助けられ、旅先でも安心感を持って楽しめました。
- MRT駅から老街・フェリー乗り場までは段差が少なく移動しやすい
- 老街の一部は石畳で揺れやすいため介助があると安心
- 恋人橋へはフェリー利用が便利

十分(シーフェン):願いを空へ飛ばすランタン体験
十分(シーフェン)は、台湾の伝統文化を体感できる場所として人気のエリアです。線路沿いの商店街や、夜空に舞うランタンは、訪れる人の心を温めてくれます。
カラフルなランタンと線路沿いの町
台北駅から平渓線で約1時間半。十分駅に降り立つと、線路沿いに商店が並び、香ばしい匂いが漂います。ランタンに願い事を書き、空へ放つ瞬間は胸が高鳴ります。
「車いすでも大丈夫」と店員さんが日本語で声をかけてくれ、丁寧に準備を手伝ってくれました。ランタンが夜空に昇ると、自然と手を合わせてしまいます。
十分大瀑布と周辺の小道散策
駅から滝へ向かう道は、のどかな田園風景と地元の暮らしが感じられる小道になっていました。軒先で干されるトウガラシや洗濯物、通りかかるスクーターの音までが旅のBGMになります。
道中にある吊橋では、揺れとともに広がる渓谷の眺めを満喫。滝のしぶきが届く場所まで近づくと、ひんやりとした空気に包まれ、思わず深呼吸してしまいます。
帰り道に立ち寄った屋台では、地元の人おすすめの胡椒餅とピーナッツアイスを購入。香ばしい匂いと熱々の餡にかぶりつきながら、小道の先に沈んでいく夕陽を眺めるひとときが、旅の余韻をより深くしてくれました。
- 商店街は一部狭く段差あり、介助が必要
- 車いす対応のランタン店あり
- 十分大瀑布は舗装された遊歩道あり
北投温泉:心と身体がとろける静けさ
台北から電車でわずか数分の距離に、心と身体をやさしく包み込む温泉地があります。個室温泉や図書館、博物館、地熱谷など、癒しと知的好奇心を同時に満たしてくれるのが北投温泉です。
個室温泉でリラックス
MRT「北投」駅から新北投駅までは約3分。駅を出ると温泉街らしい湯けむりと硫黄の香りが漂い、旅の期待が高まります。今回は予約していた個室温泉(1時間800元〜)へ向かいました。
湯に身を沈めると、旅の疲れだけでなく心の緊張までふわりとほどけ、まるで何もかもから解放されるようでした。湯けむり越しに聞いたその言葉に、私も深く頷きました。

「こんなに静かな場所が、台北のすぐ近くにあるなんて…」
図書館・博物館・地熱谷
温泉の後は北投図書館へ。木の香りとぬくもりに包まれた空間で本を開くと、時間がゆっくり流れていきます。さらに温泉博物館では、歴史や文化に触れながら、湯が人々の暮らしに息づいてきたことを実感しました。
最後に訪れた地熱谷では、立ち上る湯気と青緑の湯面が幻想的で、自然の力強さに心を奪われます。立ち上る湯気と青緑の水面に見とれながら、「地球が生きてるって、こういうことなんだね」と話したその時間も、忘れられない思い出です。
駅から主要観光地まで歩道が整備されており移動はしやすいですが、一部の温泉施設は段差があるため事前確認がおすすめです。公共足湯には手すり付きの場所もあり、地元の人々との交流も楽しめます。
- 駅から主要観光地まで歩道が整備され移動しやすい
- 温泉施設は段差あり、事前確認を推奨
- 公共足湯は手すり付きの場所あり
まとめ:台北からの小さな冒険で深呼吸
九份・淡水・十分・北投温泉。それぞれが美しい景色と温かな人との出会いをくれました。観光地としての魅力はもちろん、傘を貸してくれた屋台の人、ランタンを手伝ってくれたスタッフ、タロイモ団子をすすめてくれたおばさん——そんな優しさが心に残ります。
歴史、自然、温泉、そして人の笑顔。ほんの少し足をのばすだけで、日常にはない空気を吸い込み、心が軽くなる時間に出会えます。次の台湾旅行では、ぜひ台北からの小さな冒険を楽しんでください。
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