春のやわらかな日差しの中、友人のまりえさんと台湾旅行を計画しました。私自身、これまで何度も台北を訪れていますが、毎回新しい発見があります。今回は「現地でしか味わえない体験」をテーマに、私たちが実際に歩いて感じた台北の伝統と現代が交差するスポットを、体験談たっぷりでご紹介します。
龍山寺|祈りと歴史が息づく場所
旅の最初に向かったのは、私が台北で一番好きなお寺「龍山寺」です。MRTの出口を出た瞬間、ふわっと漂う線香の香りに包まれ、「ああ、また台北に来たんだ」と実感しました。朝8時ごろ、境内にはすでに多くの観光客や地元の人々が集まっていました。けれど、不思議なことに、そこには観光地特有のざわめきがないのです。まるで場そのものが持つ静けさ、穏やかさに包まれているようで、心がすっと落ち着いていきました。

「香りだけでも心が落ち着くね」
スロープがしっかり整備されているのを見て、まりえさんがほっとしたように笑い、「これなら安心して歩けるね」とささやきます。境内に足を踏み入れると、赤と金の豪華な装飾が太陽の光を浴びて輝き、鐘の音が静かに響き渡る中、参拝客たちがそれぞれの思いを胸に祈りを捧げていました。私たちもそっと線香を手に列に並びます。
「足の調子、良くなりますように」まりえさんが小さく祈る声が耳に届き、私は胸がじんわりと熱くなり、「どうか今回の旅も、2人で笑顔で過ごせますように」と心の中で祈らずにはいられませんでした。
龍山寺が“パワースポット”と呼ばれる所以は、この場に立つとすぐにわかります。女神・媽祖(マーズー)様を中心に道教の神々が祀られ、女性の象徴である鳳凰の装飾が随所に散りばめられた空間は、何百年もの間、数えきれない人々の願いと祈りが積み重なってきた“生きた記憶の場”。そこに身を置くだけで、心が震えるような、包まれるような感覚を覚えました。
参拝を終えた後、境内そばの屋台で2人で豆花をシェア。ふわっとやさしい甘さが口に広がり、まりえさんが目を輝かせて「こんなに優しい味、初めてかも」と笑った瞬間、私も自然と笑顔に。彼女の笑顔を見たとき、「ここに来て、本当に良かった」と心の底から思えたのでした。
龍山寺の場所と行き方
場所
台北市萬華区廣州街211号
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最寄り駅
台北MRT板南線「龍山寺駅」下車、1番出口から徒歩すぐ(約1分)
アクセス方法
台北駅から:MRT板南線で約5分
西門駅から:MRT板南線で約2分
桃園空港から:MRT空港線+台北駅乗り換え、合計約50分
ポイント
朝の時間帯は比較的空いています。駅から出口を出ると、すぐ目の前に龍山寺の門があります。段差は少なく、スロープも設置されているので、車椅子や足が不自由な方でも安心です。
松山文創園区|創造の力に触れるアートスポット
松山文創園区は、私にとって「台北のクリエイティブな一面」を感じる場所です。初めて訪れたとき、赤レンガの建物が並ぶ風景に圧倒されました。今回は、園区内のカフェで台湾茶を味わいながら、現地アーティストの展示をじっくり鑑賞できました。
特に印象に残ったのは、手作り雑貨のマーケットで出会った作家さんとの会話です。「この布はおばあちゃんが染めたんですよ」と教えてくれたエピソードは、今でも忘れられません。こうした偶然の出会いが、旅の思い出をより深いものにしてくれます。

「わあ、昔の工場ってこんな雰囲気だったんだね」
赤レンガの壁に差し込む柔らかい光、レンガの温もり、周囲の木々のざわめき。視界に広がるその光景は、まるで過去と現在が静かに語り合っているような不思議な感覚をもたらします。
事前に調べておいたバリアフリールートを確認し、私たちは石畳を避け、段差の少ない通路を選んでゆっくり歩きました。途中、外壁に残る古い文字や工場時代の名残に「これ、当時のまま残してるのかな」と足を止め、2人で写真を撮ったり、笑い合ったり。そんな何気ないやり取りが、旅の記憶に深く刻まれていきます。

「やっぱり旅はこういう一息が大事だよね」
ギャラリーでは、台湾の若手アーティストによる作品展を鑑賞。「これ、見て見て!かわいくない?」とまりえさんが指差したのは、手作りの布雑貨。触ってみると優しい布の感触が手に広がり、2人でおそろいのハンドメイドポーチを買うことに。「帰国したらこれ持ってカフェ行こうね!」と顔を見合わせ、笑顔になりました。
歩き疲れたら、木漏れ日の射すカフェへ。店内に入ると、ほんのり甘いスコーンと花のような香りの台湾茶がテーブルに運ばれてきました。「ねえ、こういう時間ってほんとに贅沢だね」とまりえさん。2人でカップを手に取り、静かにひと息つくと、旅の疲れも心地よく癒されていきます。

「こういう場所があるって、台湾ってほんと素敵だね」
松山文創園区の場所と行き方
場所
台北市信義区光復南路133号
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最寄り駅
台北MRT板南線「市政府駅」下車、1番出口から徒歩約5分
アクセス方法
台北駅から:MRT板南線で約10分
西門駅から:MRT板南線で約15分
桃園空港から:MRT空港線+台北駅乗り換え、合計約50分
ポイント
松山文創園区は広く、段差の多い場所もあるので、事前にバリアフリーマップを確認しておくと安心です。休憩できるカフェが点在しているので、歩き疲れたら無理せず立ち寄ってみてください。心がほっと落ち着く時間が、ここではきっと待っています。
大稲埕|古き良き台北の面影を歩く
二日目の午後、私たちは大稲埕(ダーダオチェン)をのんびり散策しました。私が特に好きなのは、迪化街の乾物屋さん巡りです。お店の人におすすめを聞きながら、漢方の香りやドライフルーツの甘さを実際に試食できるのが楽しいポイントです。川沿いの埠頭で夕日を眺めながら、旅の思い出を語り合う時間は、ガイドブックには載っていない私たちだけの特別なひとときでした。
歩道が狭いエリアでは、小型タクシーを利用しました。ドライバーさんはにこやかで、片言の中国語と身振り手振りで「おすすめの乾物屋はどこ?」と尋ねると、「あっちだよ!」と指差しで教えてくれました。乾物屋に入ると、店内は漢方の香りと乾燥フルーツの甘い匂いが入り混じり、思わず2人で顔を見合わせて笑ってしまいました。

「この匂い、スパイシー?それとも甘い?」

「甘いようなスパイシーのような、面白いね!クセになるね。」
お店の人も気さくで、乾物をひとつずつ試食させてくれました。「これ、お茶に入れると美味しいのよ」と教えてもらったときの、まりえさんの「買って帰りたい!」というキラキラした目が忘れられません。
日が傾き、川沿いの埠頭に座り込むと、オレンジ色の夕日がゆっくりと沈んでいくのが見えました。「こういう時間って、旅のご褒美だよね」とまりえさんがしみじみつぶやきます。私も「うん、次の旅行先も一緒に決めようね」と笑いながら返しました。そよ風に吹かれながら、旅の締めくくりにぴったりの穏やかな時間を過ごしました。
大稲埕(ダーダオチェン)の場所と行き方
場所
台北市大同区迪化街周辺
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最寄り駅
台北MRT淡水信義線「北門駅」下車、徒歩約10分
アクセス方法
台北駅から:徒歩約15分またはMRT淡水信義線で北門駅下車
桃園空港から:MRT空港線+台北駅乗り換え、合計約50分
読者への一言アドバイス: 混雑を避けるなら平日午後が狙い目です。歩道が狭いので、事前にタクシーを利用するルートを考えておくと安心です。
華山1914文化創意産業園区|若者と伝統が交差するカルチャー拠点
華山1914文化創意産業園区では、地元アーティストのクラフトマーケットをじっくり見て回りました。私が気に入ったのは、淡水の風景を描いた絵葉書でした。作家さんと直接お話しできて、作品への思いも聞けたことで、旅の記念品がより特別なものになりました。カフェでのんびりパイナップルケーキを味わいながら、次の行き先を相談する時間も、私たちの旅の大切な一部です。

「若い人たちのエネルギーってすごいね!」
私たちはクラフトマーケットで、地元アーティストの絵葉書を物色しました。まりえさんが「これ、淡水の風景だって。帰ったら部屋に飾ろうかな」と嬉しそうに話すのを聞き、私も心が温かくなりました。
おしゃれなカフェでパイナップルケーキとコーヒーを楽しみながら、「次はどこ行こうか?」と相談する時間も大事な旅の一部です。柔らかいソファ席のカフェを選んだおかげで、まりえさんもリラックスできました。
華山1914文化創意産業園区の場所と行き方
場所
台北市中正区八徳路一段1号
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最寄り駅
台北MRT板南線「善導寺駅」下車、出口6から徒歩約5分
アクセス方法
台北駅から:徒歩約15分またはMRT板南線で善導寺駅下車
桃園空港から:MRT空港線+台北駅乗り換え、合計約50分
読者への一言アドバイス: 大稲埕は平日午後が比較的空いています。歩道は狭い場所が多いので、無理せず小型タクシーを利用するルートを計画しておくと安心です。現地の人との触れ合いも、このエリアならではの楽しみなので、ぜひ好奇心を持って散策してみてください。
北投温泉|癒しの湯とモダン建築
旅の最後は北投温泉へ。私は事前にバリアフリーの宿を予約し、到着後すぐに温泉でリラックスできました。湯けむりの中、地元の方とおしゃべりを楽しんだり、北投図書館で木の香りに包まれて静かに読書したりと、心も体も癒される時間を過ごしました。
帰り際、足湯スポットでまりえさんと「また来ようね」と約束した瞬間が、旅の締めくくりにぴったりでした。

こういう場所に来ると、旅の疲れがスッと抜ける気がするね

「わかる、まさに癒しの地だよね、至福の時間ってこういう時間のことを言うんだろうなぁ、幸せ!」
湯上がりには、北投図書館へ足を運びました。世界でも有数のエコ建築といわれるこの建物は、外観も美しいですが、中に入ると木材の温もりが全身を包み込みます。静かにページをめくる音と、窓越しに差し込むやわらかな光が差し込むなか、「ここは本を読まなくても座っているだけで心が休まる」としみじみ感じました。

「こんな図書館、日本にはなかなかないよね」
北投温泉の場所と行き方
場所
台北市北投区温泉路周辺
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最寄り駅
台北MRT淡水信義線「北投駅」下車、専用シャトルまたは新北投支線で新北投駅下車、徒歩約5分
アクセス方法
台北駅から:MRT淡水信義線で北投駅まで約30分、そこから新北投駅まで約5分
桃園空港から:MRT空港線+台北駅乗り換え、合計約1時間10分
読者への一言アドバイス: 北投温泉は事前予約が必須。段差や手すりの有無をしっかり確認して、安心して温泉を楽しみましょう
まとめ|伝統と現代が調和する台湾の魅力
今回の台北旅で強く感じたのは、「伝統」と「現代」が本当に自然に共存していること。龍山寺でのお参りや、松山文創園区でのアーティストとの出会い、北投温泉での癒しなど、どれも私自身の体験として心に残っています。台湾を訪れるなら、ぜひ自分の足で歩き、現地の人とふれあい、五感で感じてみてください。きっと、あなただけの特別な思い出ができるはずです。
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