「駅のホームでペットボトルの水を一口…」日本では何気ない行動でも、台北のMRT駅でキャップを開けた瞬間、周囲の視線がピタッと私に集まり、思わず手が止まりました。
やさしい国・台湾。だからこそ“気持ちよく過ごすためのルール”がしっかりあります。知らないと恥ずかしい思いをすることも──。ここでは私と家族が実際に体験して学んだ、やってはいけない旅マナー10を、エピソードと実用アドバイスつきでお届けします。
歩きタバコは罰金対象!喫煙は指定エリアのみ
台北の夜市を家族で歩いていた時、人波の中でタバコを手に歩く旅行者に、制服姿のスタッフが素早く駆け寄るのを目撃しました。空気が一瞬でピリッと引き締まり、周囲の視線が集中していました。
私たちがコンビニ前の灰皿付きスペースで一息ついていると、地元の方が「ここならOKだよ」と穏やかに教えてくれました。路上・公園・夜市の通路は基本禁煙です。
吸う人も吸わない人も、お互いの快適さを守るためのルールです。台湾では、決められた場所以外で吸うと高額な罰金が科せられると聞き、喫煙者も非喫煙者もお互いを尊重する文化に感心しました。
エスカレーターは「右立ち・左歩き」が基本
初めて台北駅でエスカレーターに乗ったとき、日本のクセで左に立ってしまい、すぐ後ろの人の動きが滞ってしまいました。小さな声で「すみません」と言われ、慌てて右へ移動しました。
右側に立つ/左側を歩行レーンとして空けるのが一般的です。台湾は全体的にスピードが速め。ベビーカーやキャリーは右側で安定させ、周囲の流れを崩さないことが安全にもつながります。

「お母さん、逆だよ!」
廟での参拝:入口・出口は表示に従う(帽子・露出にも配慮)
龍山寺で入口を迷っていた私に、地元のご婦人が「こちらからどうぞ」とやさしく手招きしてくれました。台湾の廟は入口と出口が分かれている場合が多く、境内の矢印や表示に従うのが安心です。
帽子は取り、露出の高い服装は控えめに。線香は3本、祈る順番が示されていることもあります。香の煙に包まれ、静かに目を閉じると、家族の健康を願う気持ちが自然と整いました。
夜市での値切りは控えめ。笑顔のひと言が“おまけ”を呼ぶ
フルーツ屋台で、隣の旅行者が強引に値切った末に店主にピシャリ怒られていました。「いらないなら買わなくていい」。一気に空気が険しくなりました。
私たちは「これ、すごく美味しそう!」と明るく声をかけ、量やカットの相談をすると、店主の方から「三つ買ったら一個サービスね」と満面な笑顔です。
値切りより、短い会話と感謝のひと言が、結局いちばんお得なんだと感じた瞬間です。
バスは「降車ボタン」必須。押し忘れると容赦なく通過
ホテル前の停留所で降りるつもりが、景色に見入ってボタンを押し忘れ、車体はスッと走り抜けました。台湾の市内バスは、乗客の意思表示がないと停まらない路線が多めです。
次の停留所で降りて反対方向に乗り換えると、旅の時間はあっという間に削られます。運転席上の電光掲示で停留所名を確認し、1〜2つ前でボタン→ドア側に寄って待機が鉄則です。
MRTは飲食完全NG。水もガムも“改札外で完結”
改札を抜けてすぐ、一口だけ…とボトルを傾けかけた瞬間、近くの方が静かに首を振りました。MRT構内・車内は飲食禁止です。清潔で快適な空間は、みんなのルール意識で守られているのだと実感しました。
喉が渇きやすい季節は、ホームに入る前に飲み切る/飴やガムはバッグにしまうの2点を徹底。
ゴミ箱は少ない。“持ち帰り前提”が旅のストレスを減らす
夜市で食べ歩きを楽しんだ帰り道、ゴミ箱が見つからず20分さまよった夜。台湾の街は清潔ですが、公共のゴミ箱は本当に少ないです。以後、私たちはポケットサイズのビニール袋を常に携帯していました。
袋の口を軽く結べば匂いも気になりません。MRT内での処理はNGなので、ホテルの客室で分別までがワンセット。小さな習慣が旅の快適さを大きく変えます。
フラッシュ撮影禁止の場が多い。設定は“事前OFF”で安心
廟や博物館では撮影OKでもフラッシュNGが大半です。暗い展示や神像に光が当たると劣化や落ち着きの喪失につながります。
オートでフラッシュが光って冷や汗…を避けるため、会場に入る前にフラッシュOFF/シャッター音にも配慮をしましょう。
境内では、参拝中の方の正面撮影も避け、斜め後ろ・遠景で雰囲気を切り取るのが礼儀です。

「オートだと勝手に光ることあるから、フラッシュはOFFにしといた方がいいよ」
道を聞くなら、まず「不好意思」から、漢字メモが最強
「すみません(不好意思)」のひと言で、相手の表情がふっと和らぐのが台湾の温かさを感じました。私たちが迷っていたとき、若い女性は笑顔で道を教えてくれ、別の日には年配ご夫婦が目的地まで付き添ってくださいました。
地名は日本語読みと異なることが多いので、漢字表記のメモや地図のピンを見せると、案内が一気にスムーズになります。
横断歩道は“青でも注意”。水はボトル常備・歯磨きもミネラルで
交差点で信号が青に変わっても、バイクがすっと先頭に出る台湾の交通スタイルです。歩行開始前に左右確認をクセにしましょう。夜市付近では屋台の搬入出も重なり、早足にならないのが安全への近道です。
また、水道水は基本飲用不可。未開封のボトルを常に一本常備していました。ホテルでは歯磨きにもミネラルウォーターを使うと、お腹の弱い人も安心です。
冷蔵庫に夜市帰りのドリンクを“翌朝分”として保管しておくと、朝の外出前がラクになります。
まとめ|小さな配慮が“台湾のやさしさ”を引き出す鍵
ルールは“縛り”ではなく、お互いが心地よく過ごすための合言葉です。
歩きタバコ、エスカレーター、廟での所作、夜市での買い方、バスの降車ボタン、MRT飲食NG、ゴミの持ち帰り、フラッシュ禁止、声かけの礼儀、交通&水事情──。
どれも知っていれば誰でもできる配慮ばかりです。私たちが小さなマナーを守るほど、道に迷ったときの「大丈夫?」という声、屋台の「おまけね」という笑顔、廟での静かな時間が、いっそう温かく心に残ります。
次の台湾旅行では、今日の10項目を“旅の最初の荷造り”としてバッグにそっと入れてください。きっと、出会う優しさの数が増えます。
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