「雨、降ってきた…どうしよう?」台北旅行3日目。突然のスコールに足止めされた私たち家族は、予定を切り替えて“地上に出ない雨の日プラン”を実行しました。
りゅうが指差したのは台北駅の地下街の案内板です。「ここなら濡れないし、いろいろ回れそう」。その判断が、もうひとつの台湾を見せてくれました。
台北駅地下街へ|通路図に迷う、冒険の入口
まずは現在地と出口番号を確認し、気になる店だけ“点で寄り道”する作戦に切り替え。順路を決めないことで、疲れずに発見が増える——これが地下街攻略の第一歩です。
改札を出ると、店名と通路がびっしり描かれた案内板がありました。少し歩けば雑貨、文具、ゲームセンター、コスメ、漫画喫茶…地上の雨が嘘みたいに賑やかな世界です。

「ここ…まるでひとつの町みたい」
私たちは花菜の一言に目を丸くし、地図を片手に歩き出しました。まず合流地点を柱番号で決めて「迷ったらここに戻る」を共有し、安心の拠点を確保しました。
矢印サインに沿って“広い通路→枝道”の順で回ると往復が減り、体力も時間も上手に温存できます。
地上は雨、でも地下はテーマパーク
私たちが歩いたのは、改札から続くだだっ広いエリア。複雑に入り組んだ通路には、アニメグッズ店やレトロ雑貨、学生に人気のファッションなど個性的な店がずらりと並んでいます。
りゅうが「このフィギュア、限定版かも!」と駆け寄れば、花菜はアクセサリー店へ一直線です。私は昔のデパート地下を思わせる空気に、どこか懐かしさを覚えました。
家族それぞれに“お気に入り”が見つかり、雨の憂鬱は消えていきます。
母と娘、コスメと雑貨でほっこり時間
香りに引き寄せられて入った自然派コスメの店で、花菜は「おばあちゃんに似合いそう」と金木犀のハンドクリームを選択しました。
隣のレトロ雑貨店では、私は手描き地図のポスターに一目惚れです。「家に飾ったら旅の続きになるね」と話しながら、袋を大切に抱えました。

「家に飾ろうかしら。凄くこのレトロな感じが素敵!旅の記録って、こういう形でも残るのね」
迷子もまた旅の一部|方向音痴が生んだ寄り道の奇跡
地図を見ているのに、同じ猫イラストの雑貨店の前へ三度戻ってくる私たちです。苦笑いしつつ引き返した先で、偶然見つけたのは古い台湾映画ポスターの小さなブースでした。
店主が「これは名作でね」と語ってくれた時間は、ガイドブックにない私たちだけの宝物になりました。迷うことさえ、旅の醍醐味です。
駅直結の“味の迷宮”へ|Q Squareフードコートでそれぞれの一皿
ピーク時間は席が埋まりやすいので、先に席確保→交代で購入が効率的。家族旅行は“シェア前提”にすれば、少量×多種類で満足度が跳ね上がります。
歩き回って気づけば午後2時です。りゅうが「上にモールがあるよ」と調べてくれて、駅直結の京站時尚廣場(Q Square)へ向かいました。
フードコートの湯気と香りに三人とも「すごい…」と、驚くほどの広さです。ぐるり一周して、各自好きなものを選んで合流する作戦になりました。
魯肉飯セット|シンプルだけど奥深い

「見た目は地味でも香りがふわっと広がって飽きない。毎日でもいける」
小籠包と点心|熱々の幸せが弾ける

「レンゲにのせてそっとかじって、、、この熱々の弾けるスープが幸せ…」。
鹹豆漿と蛋餅|胃にやさしいごちそう

「豆乳のやわらかさにザーサイや干しエビの香ばしさが重なり, じんわり体が温まりまる。。。」
食後のスイーツも抜かりなく──黒糖豆花でしめる台湾時間
豆花は、ふるふる食感とやさしい甘さが絶妙です。タロイモ団子のもちもちと黒糖シロップのコクで、歩き疲れがすっと薄れていきます。「また台湾に来たら絶対食べたい」という花菜の発言に、私も同感でした。
地下街で感じた“日常の風景”
制服の高校生や会社員が、当たり前のように立ち寄ってテイクアウトを買っていく姿が印象的です。観光地では見落としがちな“暮らしのリズム”がここにはあります。
私たちもベンチで一息つきながら、その流れに自然と混ざりました。りゅうの言葉に、旅先で“暮らすように過ごす”とは、きっとこういうことなんだと感じました。

「観光地じゃないけど、暮らしが見えるね」
食後のひと笑い──クレーンゲームで童心に戻る
1回あたりの予算を先に決め、硬貨を小分けにしておくと遊びすぎ防止に。景品より“笑顔の時間”が目的だと決めると満足度が上がります。
「ちょっとだけ寄ってみようよ」とゲームセンターへ行きました。家族で挑戦したクレーンゲームは、まさかの一発ゲットです。花菜が歓声を上げ、私は本気の面持ちでレバーを握って二回目も成功でした。
拍手と笑い声に包まれ、いつのまにか大人の肩の力が抜けていました。
地下街を賢く使うなら──最初の10分で“全体像”をつかむ
最初に合流地点(柱番号・店名)を決め、迷ったらそこへ戻る“ハブ方式”が安心です。地図アプリの共有で現在地を見合わせるとロスが激減します。
入ってすぐ立ち止まり、案内板で「出口番号」「現在地」「主要通路」を把握します。順路は決めず、気になる店だけ“点で寄り道”にします。ベンチは交差点付近に点在しているので、短い休憩をこまめに挟むのがコツです。
安全と快適さの小さなコツ
ピーク時間は人の流れが速いので、リュックは前抱えにしましょう。急な立ち止まりを控えれば安心です。トイレは大型店やモール側に集約されることが多いので、見つけたら位置をメモしておくと後半がラクです。
手指消毒やウェットティッシュも携帯しておくとバッチリです。混雑で立ち止まるときは、交差点の少し手前で壁側に寄ってから休憩すると安全です。
雨の日は床のタイルが滑りやすいので、滑りにくい靴+歩幅小さめでゆっくり歩きましょう。
おみやげ選びも地下街で完結
文具やコスメのミニサイズ、レトロポスターや限定シール…軽くて“今日から使える系”が豊富にあります。花菜はハンドクリームをおばあちゃんに、私はポスターを帰国後に額装して玄関へ飾りました。旅の余韻がふっと立ち上がります。
雨の日にこそ“偶然の出会い”が増える理由
屋外移動が減るぶん立ち止まりやすく、小さな店で会話が生まれやすいです。予定外の余白が、地下街では良い方向に転がっていくのを実感しました。
まとめ:観光地じゃなくても、“心の旅”はできる
通路は単なる移動のためではなく、日常と旅が交差する“舞台”があります。雨の日の避難先が、気づけば心の寄り道へと変わっていました。
「また雨が降ったら地下街に行こうね」と花菜の言葉に、きっと晴れた日も、私はここを歩くでしょうと感じた瞬間でした。思いがけない出会いは、いつも少し下に隠れています。
コメント