「雨、降ってきた…どうしよう?」台北旅行3日目。私たち家族3人は、突然のスコールに足止めされてしまいました。天気アプリでは晴れ予報だったのに、まさかの雨。傘もホテルに置いたままです。それでも旅の時間を無駄にはしたくない。
そんなときにりゅうが見つけたのが、台北駅の地下街の案内板でした。「雨でも行ける場所、ここしかないよ」と言われ、急きょ予定変更。その判断が、結果的に**もうひとつの“台湾体験”**をくれることになったのです。
台北駅地下街へ|通路図に迷う、冒険の入口
MRT台北駅を降りると、地上に出る前に見えた案内板に、びっしりと並んだ店名と通路図が貼られていました。改札を出て少し歩くと、すぐに雑貨や文房具のお店が目に入りました。しかもその先には、ゲームセンター、コスメ店、漫画喫茶まで並んでいて、雨のせいで憂鬱だった気持ちがすっかり吹き飛びました。

「ここ…まるでひとつの町みたい」
通路には地元の学生や観光客が行き交い、小さな音楽が流れる店先からはコスメの香りがふわりと漂います。私たちは「まずどこに入ってみようか」と目を合わせ、地図を片手にゆっくりと歩き出しました。
地上は雨、でも地下街はテーマパーク
台北駅の地下街に足を踏み入れた瞬間、目の前に広がる通路の長さに思わず家族で顔を見合わせました。私たちが歩いたのは、M6出口からY27出口まで続く約800メートルのだたっ広いエリアです。
息子が「まるで迷路みたい!」と声を上げるほど、複雑に入り組んだ通路には、アニメグッズ専門店や昔懐かしいレトロ雑貨の店、地元の学生に人気のファッションショップなど、個性的なお店がずらりと並んでいました。

「見て!このフィギュア、限定版かも!」
ゲームセンターのピコピコ音、カップルが並んで撮るプリクラ、子ども向けのおもちゃ屋のにぎやかな看板──Lulucoは「昔のデパートの地下街みたい」と懐かくなり、花菜はさっそく目を輝かせてアクセサリー店に飛び込んでいきました。
花菜は、台湾限定のキャラクター文房具を見つけて大興奮です。最近ゲームからは遠ざかっていた息子のりゅうも、レトロなゲームセンターの前で足を止めて「子どもの頃を思い出すな」としみじみとしていました。私たち家族それぞれが、思いがけない“お気に入り”を発見できたのが印象的でした。
母と娘、コスメと雑貨でほっこり時間
方向感覚を頼りに再び進んだ先には、台湾漢方ベースの自然派コスメ専門店を見つけました。金木犀の香りがふんわり広がる中、花菜が選んだのは「おばあちゃんにぴったりな香り」のハンドクリームです。
「肌が弱くても安心して使えるの、って書いてあるよ」彼女なりに家族を思って選んだ姿に、小さな成長を感じました。その隣のレトロ雑貨店では、私は台北の手書き地図ポスターに一目惚れしてしまいました。

「家に飾ろうかしら。凄くこのレトロな感じが素敵!旅の記録って、こういう形でも残るのね」
迷子もまた旅の一部|方向音痴が生んだ“寄り道の奇跡”
実は、私たち家族は方向音痴で有名。今回も案の定、地下街の地図を片手に歩いていたはずが、気がつけば同じ猫のイラストが描かれた雑貨店の前に3度も戻ってきてしまいました。最初は「またここ?」と苦笑いしていましたが、迷ったおかげで偶然、レトロな映画ポスターを扱う小さなブースに出会えたのです。
店主のおじさんが「これは昔の台湾映画だよ」と語ってくれた思い出は、ガイドブックには載っていない、私たちだけの宝物になりました。迷子になることさえ、旅の醍醐味だと実感した瞬間です。
駅直結の“味の迷宮”へ|Q Squareフードコートで出会った、それぞれの一皿
「ねえ、なんか…すごくお腹すいてきたかも」台北地下街を歩き回った後、花菜がぽつりとつぶやきました。気づけば時計は午後2時。朝ごはんが軽めだったせいもあり、私たち親子の空腹メーターは限界に近づいていました。
「すぐ上にQ Squareっていうモールがあるよ。たしかフードコートがあったはず」と、りゅうがスマホで調べて提案してくれました。MRT台北駅直結、京站時尚廣場(Q Square)は、台北車站に隣接する大型ショッピングモールです。腹ペコな私たちはすぐに向かいました。
選ぶ楽しさに迷う幸せ|それぞれの“食の旅”が始まった
店がずらりと並ぶQ Squareのフードコートに足を踏み入れた瞬間、3人とも口をそろえて「すごい…」と声を漏らしました。店頭から立ちのぼる湯気、揚げ物の香ばしさ、焼きそばの甘辛い香り──それぞれが胃袋をわしづかみにしてくるような魅力的な空間満載です。
私たちは、ぐるっと一周してから好きなものを選んでテーブルで合流することになりました。
りゅうが選んだのは魯肉飯セット|「シンプルだけど、奥深い」
「やっぱり台湾来たら魯肉飯だよな」と言って、りゅうが選んだのは、魯肉飯+滷蛋(煮卵)+青菜スープのセット。ほかほかのご飯の上に、甘辛く煮込まれた豚ひき肉がとろりとかけられています。

「見た目は地味だけど、口に入れると香りがふわっと広がって、全然飽きない。これ、毎日でもいけるわ」
花菜が飛びついたのは小籠包と点心セット|熱々の幸せが口の中で弾けた
花菜は、せいろから湯気が立ち上る小籠包と、春巻き・焼売がセットになった点心セットを選びました。「小籠包、すっごい肉汁…!」と目を丸くしながら、そっと箸で持ち上げて、レンゲにのせてから口に運ぶ姿が印象的でした。
一口かじると、中からジュワッとあふれるスープに、「あっついけど幸せ…」と笑みがこぼれます。

「日本で食べるのと全然ちがう。皮がもっちりしてるし、お肉の香りも強くて本場って感じ!」
私は鹹豆漿と米粉湯のセットで、胃にやさしいごちそう時間
私は、少し疲れた胃をいたわろうと、鹹豆漿(塩味豆乳スープ)と蚕餅のセットを選びました。鹹豆漿は、酢で少し固まった豆乳の中にザーサイや干しエビ、ネギが入り、じんわりと塩気と香ばしさが広がる一杯です。レンゲをすくうたびに、豆乳の柔らかさが心までほぐしてくれるような感覚がありました。
蚕餅は、パリっとしていて、の相性が抜群で、鹹豆漿の中にくぐらせて食べると絶妙な味わいです。食べ進めるほどに身体の内側からじんわり温まります。

「旅先って、こういう一杯が一番沁みるのよね」
食後のスイーツも抜かりなく|黒糖豆花でしめる台湾時間
フードコートでお腹を満たした後、娘が「台湾スイーツも食べてみたい!」と目を輝かせて黒糖豆花の店へ。注文した豆花は、ふるふるの食感と優しい甘さが絶妙で、ひと口食べた瞬間「これ、日本ではなかなか味わえないね!」と家族で感動しました。
特に、トッピングのタロイモ団子のもちもち感と黒糖シロップのコクが、旅の疲れをそっと癒してくれました。娘が「また台湾に来たら絶対食べたい」と言っていたのが印象的でした。
地下街で感じた、地元の日常の風景
地下街を歩いていると、観光客だけでなく、制服姿の高校生や仕事帰りの会社員が、慣れた様子でお店に立ち寄り、テイクアウトのご飯を買っていく姿が印象的でした。
私たち家族も、地元の人たちに混じってベンチで休憩しながら、台湾の日常の空気を肌で感じることができ、「旅先で暮らすように過ごすって、こういうことなんだ」としみじみ感じました。

「観光地って感じじゃないけど、なんか台北の“暮らし”が見えるね」
私たちが旅に求めていたのは、まさにこうしたリアルな日常との交差点だったのかもしれません。文具屋では、台湾限定デザインのシール帳やペンが並び、花菜は「このノート、日本の友達にも見せたい」と何冊か買い込んでいました。これも台湾ならでは、花菜の感性がビンビン刺激されているようでした。
食後のひと笑い|クレーンゲームで童心に戻る
食後、息子が「ちょっとだけ寄ってみようよ」と誘ってくれたゲームセンターでが、家族3人でクレーンゲームに挑戦しました。ところがまさかの一発でぬいぐるみをゲット!です。花奈が大喜びで「これが一番の思い出かも」と言ってくれたのが嬉しかったです。
普段は忙しくてなかなか一緒に遊ぶ時間が取れない分、旅先で家族全員が童心に返って笑い合えたひとときは、かけがえのない思い出になりました。私Lulucoも「ちょっとやってみよう」と思い、目を子供たちが疑うほど真剣にレバーを操作していました。
隣で花菜が「お母さん、本気すぎる…」と笑っていたその瞬間──なんと一発で小さなぬいぐるみをゲット!したのです。
「まだ腕は鈍ってないわね」と得意げに微笑む母に、花菜とりゅうが拍手喝采。
年齢を超えて楽しめる時間がある、それも旅の醍醐味だと改めて感じた瞬間でした。
観光地じゃなくても、“心の旅”はできる
台湾の地下街は、単なる通路ではなく、日常の息づかいと、小さな感動が溶け合う場所でした。
観光地にはないリアルな暮らしの気配、人のやさしさ、そして偶然の出会いが、静かに心を満たしてくれます。「また雨が降ったら、地下街に行こうね」と花菜がつぶやいたその一言に、私はふと微笑みました。
きっと晴れていても、私はまたここに来ると思います。この場所が教えてくれた、旅の本当の楽しさを思い出すために、奥深いディープな旅となりました。
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