「お母さん、お兄ちゃんとだけズルい。今度は私と二人で行こう?」娘・花菜(かな)の突然の提案に、私は思わず笑ってしまいました。
数日前、息子・りゅうとの台湾旅の写真を見せていたとき、花菜は少し拗ねた顔をしていたました。その理由が、ようやくわかりました。
留学の記憶がよみがえる、母娘のきっかけ
花菜は高校時代に台湾へ短期留学しており、現地の人々やスイーツの温かさを今も覚えていました。「黒糖豆花も芋圓も、お母さん絶対好きだよ!」その一言がきっかけで、母娘旅の計画が動き出しました。
息子・りゅうとはまた違う、娘の感性が見せてくれる新しい台湾、そうして始まったのは、“優しさと甘さ”が重なる旅でした。
あの一杯で変わった、黒糖タピオカミルクティーに母も夢中
「まずはここ!」と花菜が指差したのは、忠孝復興駅近くの小さなドリンクスタンド「珍煮丹(ジェンジューダン)」です。高校時代によく通ったというその店で、花菜は懐かしそうに笑いました。
黒糖タピオカミルクティーをひと口飲んだ瞬間、濃厚な黒糖の香りと控えめな甘さが口いっぱいに広がり、「これなら日本でも飲みたい!」と思えるほどです。

黒糖の深みが生む“やさしいスイーツ”

これ、ほんとにタピオカ?すごくコクがあるのね…!

「お母さん、甘いだけって思ってたでしょ?黒糖がイイ味にしてるの!」
日本で飲むタピオカとはまるで別物です。黒糖の香ばしさと温かいもちもち食感が合わさり、
現地の空気を感じながら並んで飲む時間までもがご馳走のようでした。
涙が出た一杯、寧夏夜市で食べた豆花と、おばちゃんのひとこと
「ここは私のお気に入り!」と花菜が案内してくれたのは、寧夏夜市の「阿婆豆花(アーポートウファ)」です。ふわふわの豆花をひと口食べると、黒糖の優しい甘さがじんわり広がり、心が満たされていきます。
屋台のおばちゃんが笑顔で「お母さんを連れてきてくれて嬉しいね」と声をかけてくれ、その言葉に胸が熱くなりました。
母が感じた“娘を支えた味”

「これ、落ち込んだ時に食べたら泣いちゃうね…」

「うん。ホームシックのとき、この豆花とおばちゃんに何度も助けられたの」
温かい豆花の甘さが、花菜の成長と優しさを映し出すようでした。親として、娘の人生に寄り添ってくれた台湾の人々に感謝で胸がいっぱいになりました。

九份の階段の先で母娘で分け合った“もっちもち”芋圓の思い出
坂道の途中で「甘いもん食べたい!」と花菜がかけ出しました。連れて行かれたのは「阿柑姨芋圓(アーカンイーユーユェン)」です。
窓際の席から霧に包まれた海を眺めながら、湯気の立つ芋圓を前に花菜が笑いました。
一口ごとに深まる、母娘の絆

「これ、タロイモ!もっちりしててクセになるでしょ?」

「ほんと、美味しい!私の好み、よく知ってるね!」
色とりどりの団子を味わいながら、母娘で宝探しをしているような時間です。海霧に包まれた幻想的な景色の中で、“同じものを共有する幸せ”を心から感じました。

サクッと香ばしい幸福を手に|台湾エッグロール(台湾蛋捲/Dàn juǎn)
花菜と永康街を歩いていると、バターの甘い香りがふわっと漂ってきました。その先にあったのは、小さな焼き菓子店です。
店先のガラス越しに、職人さんがくるくると生地を巻いている姿が見えました。

「お母さん、これ“台湾蛋捲(ダンジュエン)”っていうの。
おばあちゃんへのお土産にぴったりだよ!」

「エッグロール?見た目は日本のロールクッキーに似てるけど、
なんだか香りがすごく濃厚ね…!」
サクッと軽くて、どこか懐かしい味
試食をすすめられ、焼きたてをひと口食べてみました。口に入れた瞬間、サクッという音とともに
バターと卵の香ばしさがふわっと広がりました。

「優しい味でしょ?子どもの頃、おばあちゃんが作ってくれたクッキーに似てるんだよね」

「ほんとだ、どこか懐かしいね。
でもこの軽さは台湾ならではの感じ。」
お店の人が「これは一本ずつ手巻きしてるからね」と誇らしげに語る姿も印象的でした。
缶に詰めてもらいながら、「おばあちゃん、きっと喜ぶね」と顔を見合わせた瞬間、旅の温もりがまたひとつ増えました。

黒胡麻湯圓(タンエン)|心までほどける“温スイーツ”
夜の迪化街を歩いていると、小さな屋台から湯気が立ち上るのが見えました。その湯気の中で、丸い白玉のような団子がぷかぷか浮かんでいます。

「お母さん、これ“湯圓(タンエン)”って言うんだよ。
台湾では“家族円満”を願って食べるの」

「まぁ、そんな意味があるのね。
じゃあ母娘で食べるのにぴったりね」
注文すると、店主のおじさんが「冷えた夜にはこれが一番!」と笑いながら渡してくれました。
とろける黒胡麻の香りが、心を包み込む
スプーンで白玉を割ると、中から黒胡麻あんがとろりーー香ばしい香りとほのかな甘みが、冷えた体にじんわり染みていきます。

「留学してた時、冬至にみんなでこれを食べたの。
“円(まる)”の形が家族の絆の象徴なんだって。」

「なるほど、台湾らしいやさしさね。
この黒胡麻の香り、なんだか“母の味”にも似てる気がするわ。」
器を手のひらで包み込みながら、ふたりで少し黙ってスープをすすりました。その静かなひとときに、“言葉では伝えきれない想い”がじんわりと通い合った気がしました。

冷たいのに、ほっとする永康街のレモン愛
歩き疲れた午後、「ここで休もう」と花菜が連れてくれたカフェで出されたのは、透明な「檸檬愛玉ゼリー」です。スプーンを入れるとぷるぷる揺れ、ひんやりと喉を通るレモンの爽快感が走ります。

「これ、疲れ吹き飛ぶわ…元気になる!」

「台湾の夏は、これが定番だよ〜。もう私も大人でしょ?」
爽やかさの中に優しさがあり、成長した娘の姿が重なりました。

最後のご褒美スーパーで出会った“台湾プリン”
帰国前、花菜が手に取ったのは「統一布丁」です。機内で食べてみると、卵の香りがふわっと広がり、舌の上でとろけるやさしいプリンでした。
ChatGPT:

「最後まで幸せにしてくれる味ね…」

「今度は家族全員で来よう!」
台湾スイーツの締めくくりにふさわしい、心までほどける一口でした。

台湾スイーツまとめ
母娘で歩いた台湾の街角には、味だけでなく“人の温もり”がありました。ひと口の甘さが、旅の会話をやさしく包み、思い出に色を添えてくれます。
ここでは、実際に訪れたスイーツを、それぞれの味わい・場所・シーンを、短くまとめてみました。台湾を旅するあなたにも、きっと“心がほどける甘さ”が見つかるはずです。
・どこで:忠孝復興駅周辺
・特徴:濃厚黒糖×もちもち。甘すぎずコクあり
・一言メモ:歩き飲みで“現地の空気”ごと味わえる
・どこで:寧夏夜市
・特徴:ふわふわ豆花+やさしい黒糖シロップ
・一言メモ:心まで温まる“支えてくれる味”
・どこで:九份
・特徴:色とりどり&もっちり。素材で食感が違う
・一言メモ:霧の景色と一緒に“共有”したい一杯
・どこで:永康街の焼き菓子店
・特徴:サクッと軽い。卵とバターが香ばしい
・一言メモ:おばあちゃんへの手土産に最適
・どこで:迪化街の屋台
・特徴:白玉の中に黒胡麻あんがとろり
・一言メモ:“家族円満”を願う温スイーツ
・どこで:永康街のカフェ
・特徴:ぷるんと爽やか。後味すっきり
・一言メモ:夏の午後のクールダウンに
・どこで:スーパー&機内
・特徴:卵の香りとなめらか食感。甘さ控えめ
・一言メモ:旅の締めに“ほっと”する一口
終わりに:甘いだけじゃない、スイーツがくれた“つながり”の旅
台湾スイーツには単なる「美味しさ」以上の力があります。それは身体や心をじんわり癒し、人とのつながりや思い出までも豊かにしてくれるものです。今回母娘で共有した時間は、一緒に食べたスイーツによってさらに彩られました。
花菜と向き合い、語り合いながら一緒に食べた台湾スイーツは味、共有した時間や思い出、その全てがかけがえのないご馳走でした。
さらにこの旅はただ甘いものを巡るだけではなく、大切な人との絆を深める特別な時間となりました。また大事な人を連れて来たい、と思わせてくれる味です。
花菜が、「お母さんに食べさせたい」と思ってくれたように、そういう優しさを注ぎたくなる味。それが台湾スイーツの魅力なのかもしれません。
  
  
  
  

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